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千分の一話噺

第775章 モンブランな彼女②


まさか、あの女が転校生だとは思わなかった。
「…お前、あの時とまるっきり別人じゃねぇか」
「あの時は、こっちに来たばかりだし素っぴんだったから…
委員長って柄は悪いけど良い人で助かったわ」
眼鏡も掛けてないし、髪もサラサラだし、関西弁も出ない。
「委員長って呼ぶな!」
前の席の誠が振り返った。
「祐司、いつの間に知り合ったんだ?
後で詳しく教えろよ」
「…まだホームルーム中だろ、前向いてろ」
誠だけじゃなくクラスの奴らも俺と彼女の事が気になってるらしい。



それは夏祭りの夜の事だった。

「…じゃあ、またな!」
祭りが終わり誠達と別れて家に帰る途中、女に声を掛けられた。
「ねぇ、あんたこの辺の人?」
「ん?…あぁそうだぜ」
その女は、眼鏡を掛け、ボサボサの髪に、労働者が着てるファン付きのベストを着て、リュックを背負って、真っ赤なハイヒールを履いていた。

(なんだ?この姉ちゃんは…
ファッションセンスの欠片もねぇな)

「じゃあ、この辺でモンブランを食べれる店知らへん?」
「モンブラン?…ケーキの?」
「他に食べれるモンブランなんてないやろっ!」 
突っ込まれた。

(…こいつ、関西人か?)

俺はケーキも食べられるカフェを教えてやった。
「…こんな時間だからやってるかは分からねぇぞ」
「…ありがとうね
新月の時はモンブラン食べんと調子出んのよね」
「なんだ、それ?
…新月って、満月の逆バージョンだろ?」
「あはは…、じゃあ連れてってぇな」
「何で俺がっ!?」
「この辺、よう知らんのよ
コーヒーくらい奢るから、…ね!」
この訳の分からない関西女に付き合わされカフェに行った。

(はあ…、俺も大概お人好しだな…)

たまに自分の性格が嫌になる。


to be continued…

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