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千分の一話噺

第743章 捕らぬ狸の皮算用


ここは日本のとある県のとある町。

「…総裁、本当にここに作るんですか?」
「そうだ、我が財団が全世界の学校の文化祭で模擬店を出して調査した結果、ここが最適と判断した」

総裁がそこまで言うなら間違いないのだろうが、あまりにも田舎過ぎると思うのだが…。
「こう言う素朴な土地だからかこそ、優秀な人材が育つと思わないかね?」
総裁は私の心を見透かすように言った。
「失礼いたしました!
…では、すぐに町役場に向かいます」
この町の町長にはアポイントメントは取ってある。

「これはこれは、ようこそ我が伊野仲町に!」
町役場では町長始め職員一同で出迎えてくれた。
町長に至っては『揉み手』状態だ。

「盛大な歓迎を感謝します
…早速ですが、この町に我が財団の幼稚園を作りたい」
総裁が町長に切り出す。
「よ、幼稚園?ですか?」
町長は意外な提案に首を傾げた。
「そうだ、我々の調査ではこの町の潜在能力は計り知れない
特に人材の宝庫と確信している
しかしながら、ここにはその人材を教育する場がない…
そこで我が財団が幼稚園で人材育成の基礎を築こうと思っている
いずれは大学までの一貫教育も視野にいれ、ノーベル賞受賞者を輩出するつもりだ!」
総裁は力説した。

「はあ…、しかしこの町は過疎化が進み子供の数も少ないですが…」
「それは心配ない
財団の支部を作り、千人の職員も移住させる
スーパーも作り、アミューズメントパークも作り、町の発展を手助けしよう!」
町長はもろ手を挙げて歓迎した。


そして数年が経ち、町は大都会となった。

「…総裁、素朴な土地じゃなくなりましたね」
優秀な人材は育たなかった。


end




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