第742章 渋谷の秋刀魚はオバケに食べられ伝説となるのか?
ここ数年、秋刀魚が不漁で庶民の魚が高級魚になりつつあった。
しかし、今年は豊漁で庶民の元へ戻ってきた。
「よう、お前もこの船に捕まったのか」
「ああ、他にもいっぱいいるんだな?」
俺達は群れで泳いでいたが、巨大な網に引っ掛かって船に上げられた。
正に一網打尽である。
「この船は日本へ行くらしいぜ」
「あの伝説の島国?
あそこなら俺達も伝説になれるかな?」
俺達、秋刀魚族には『目黒の秋刀魚王伝説』がある。
大昔、大群を率いていた秋刀魚の王が人間に捕まり、目黒と言う場所で人間の王様に丸焼きで食べられたと言い伝えられていた。
どうせ食べられるなら人間の王様に食べられるのが秋刀魚の誇りだ。
「え~、私が聞いた話だともう日本に王様はいないんだって!」
別の秋刀魚が話に加わった。
「じゃあ、伝説はもう出来ないんだ…」
「最近はハロウィンって西洋のお祭りがあって、渋谷って場所で西洋のオバケに食べられるんだって!」
「オバケにっ!?
…それはそれで伝説になるのかな?」
秋刀魚の世界では、ちょっと間違った日本の情勢が真しやかに語られていた。
この秋刀魚達が庶民の食卓に並ぶ日は近い。
end