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千分の一話噺

第741章 ゾンビも辛いよ


僕は新卒一年目の新人ゾンビ。
早く先輩達のように人間を恐怖に陥れたい。

僕は先輩ゾンビにアドバイスを求めた。

「どうすれば先輩みたいになれますか?」
「お前の身体はまだまだ新鮮なんだよ
もっと腐らないと迫力が出ない…
まあ、こればかりは時間掛けないとな」

僕の身体は筋肉もしっかりしていて、顔色が悪い以外は人間の頃とほとんど変わっていない。
この先輩は三年目で、顔の半分くらいが腐りかけ、右手は所々骨が見えている。


実はゾンビの寿命は短いのだ。
腐りかけが一番だが、ある程度腐敗が進むと一気に白骨化してしまうからだ。
そうなると、ゾンビは卒業しスケルトンとなる。
だから現役ゾンビは長くても五年が限界と言われている。

しかし僕はゾンビが好きで、出来るだけ長くゾンビでいたいと思っている。
だから肌の手入れは欠かさないようにしている。
コラーゲンやヒアルロン酸など肌に良いと言われる化粧品を購入している。
だが、このところの円安で安い輸入品も値上がりして困っている。

「まあ、お前も後二年経てば俺みたいな一流のゾンビになれるさ」
この先輩はいろいろなイベントで引っ張りだこのエースゾンビなのだ。

しかしこの後、先輩に悲劇が訪れた。

台風の日に営業先で左半身の肉を吹き飛ばされてしまったのだ。

「う、う…半分だけじゃ、ゾンビにもスケルトンにもなれない
残りが朽ちるまで何も出来ないな…」

こうして先輩はゾンビを引退した。
僕はエースゾンビになれなくてもいいから、伝説の『十年ゾンビ』になってみたいと思う。 


end


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