第738章 アレがコレしてこうなった
「転勤ですか!?」
転勤先は土居中支店だ。
「あそこは温泉もあって良いところだぞ」
上司からは嫌味を言われる。
土居中支店はその名の通り『ど田舎』にあり、別名『陸の島流し』と言われていて、飛ばされた者で本社に戻ってきた者はいない。
成績が悪かったり、何か問題を起こした社員が飛ばされる『首切り支店』である。
俺は営業成績も常に上位だし、特に客と問題を起こしてもいない。
それなのに転勤させられるのは、同僚との飲み会に来ていた女性社員に酔った勢いでキスしてしまったせいだ。
その時はビンタ一発で済んだのだが、その女性社員は身分を隠して働いていた社長の娘だった。
社長の逆鱗に触れ、即クビは間逃れたが転勤となり、俺は引っ越しを余儀なくされた。
辞めてやるとも思ったが、何故か逆にヤル気が出てきた。
絶対に本社に戻ってやる!と…。
「あぁ~、本当に暇ですね…」
「…温泉たまご、食べる?」
この支店にも支店長がいる。
地元で採用されたシルバー人材だ。
天狗伝説がある天狗温泉で作られた温泉たまごは『天狗たまご』というこの支店の主力商品なのだ。
1日の生産量も、卸す先も限られているこの商品を細々と売っていては本社に戻れる訳がない。
「何か爆発的に売れる商品を開発しないと…」
俺は地元を駆け回り名産品、特産品を調べたが、これと言った名産も特産もなかった。
温泉はあるが古びた旅館が2軒あるだけ、天狗伝説も小さな神社に伝えられてるだけで、どちらもそれほど有名ではない。
「ダメだ…、これじゃあ本社に戻るどころじゃない」
さすがに心が折れそうだ。
今はダメでも、必ず起死回生の一発逆転をかましてやる。
俺のヤル気はまだまだこんなもんじゃないぜ。
end