• テキストサイズ

千分の一話噺

第734章 蒲焼き


記録的な円安が続き、食糧のほとんどを輸入に頼る日本は値上げラッシュが止まらない。

「なんだよ、今日も野菜炒めと味噌汁だけなのか?」
「しょうがないでしょ?何でも高いんだから…」
旦那は文句いうけど、少しでも節約したからここは我慢してもらわないと…。

食卓は一汁一菜、質素な食事で食費を節約する。
しかも、どこの家庭も共働きなので出来るだけ簡単に料理を済ませ、食器も少ないので後片付けにも時間が掛からなくて済む。

「なあ、土用の丑の日くらいはうなぎ食べようぜ」
「うなぎがどんだけ値上がりしてるか知ってて言ってる?」
晩酌のビールも値上がりしてるのに、うなぎなんて無理にきまってるじゃない。

うなぎは近年稚魚が採れず、養殖うなぎですらどんどん値上がりしている。
元々は高級魚で、バブル期に中国からの輸入増や養殖が盛んになってお手頃になった。
因みに、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されている。

「でも、普段は我慢してるんだから蒲焼きくらいは良いだろ?」
「…分かったわ、土用の丑の日には蒲焼き食べさせてあげる」
仕方ない、実家に泣き付くか…。

土用の丑の日。
有名な逸話として、江戸時代の発明家、平賀源内が鰻屋の友人を助けるために流行らせたと云われている。

「おっ!本当に蒲焼きだ!」
「今日は特別だからね」
蒲焼きは蒲焼きでも、母に頼んで地元の『なまずの蒲焼き』を送ってもらった。

一部の地域では昔からなまずが食べられている。
なまずの身はうなぎより脂が少なく淡白な味らしい。

「やっぱり土用の丑の日はコレだよね!」
「喜んでくれて良かったわ」
父が釣ったなまずを母が蒲焼きのタレを多めに浸けて焼いてくれたから、旦那じゃどっちか分からないわよね。


end


/ 1580ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp