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千分の一話噺

第732章 古民家カフェへようこそ


こどもの日、田舎の実家では今でも鯉のぼりを上げているだろう。
「GWだからたまには帰るか…」
実家に帰るのは何年ぶりだろう?
電車を乗り継いで、バスを下りると田んぼの先に家の鯉のぼりが見える。
「もう、子供がいないのに…」
弟も妹も自立し実家には両親だけだ。

畦道《あぜみち》を進むと家の庭先に見慣れない車が止まっている。
「…誰か来てるのか?」
近づくにつれ見える車の数が増える。
親戚が集まってるのかと思った。

「ただいま…?」
「いらっしゃいませ!
お一人様ですか?」
玄関を開けると見慣れない女性が…。
「…あんた、俺んちで何やってんだ?」
「はい?ウエイトレスですが…」
ウエイトレスは首を傾げた。

「どうしたんだい?」
奥からおふくろが出てきた。
「俊行!?…帰ってたのかい?」
「どうなってんだよ?これ?」
「古民家カフェ始めたんよ
まあ、珈琲でも飲んでて…」
「古民家…カフェだぁ?」
俺は訳が分からないまま、ウエイトレスの案内で席に着いた。 

家は玄関と居間を改装してカフェになってた。
「親父!?」
席には畑仕事を終えて一服している親父がいた。
「なんでこうなってるんだ?」
「お前達もいなくなったし、母さんの好きにさせても良いだろ?」
おふくろは昔から店をやりたいと思っていたそうだ。
親父は畑仕事があるからとカフェには手出ししないが反対もしなかった。
「そりゃあ良いけど、一言くらい言ってよ
貴史や翔子は知ってるのか?」
「あの二人も帰ってきた時に驚いてたよ」
親父は笑っていた。
「あいつら、俺に黙ってたのか…」
つい最近、二人とはLINEをしたばかりだ。

珈琲を飲んで一息つける。
働いているおふくろはどこかいきいきして見えた。
「GWまで働かなくてもいいだろうに…」
俺は貴史と翔子にLINEした。

『母の日は古民家カフェに全員集合だ!』
『兄貴、驚いたろ?』
『二人ともプレゼント忘れないでよ!』


end


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