第728章 五月の決断
「ゴーヤチャンプル出来たよ!」
沖縄出身の彼女の得意料理だ。
彼女とは大学で知り合って付き合う事になった。
「私は一人娘だから、どうしても後を継がないといけないの…」
彼女の実家は旅館を営んでいて卒業後は沖縄に帰ってしまった。
俺も卒業後は地元の会社に就職し、彼女とは遠距離恋愛となった。
毎日のようにテレビ電話で話し合えるがやっぱり会いたい気持ちが募る。
ゴールデンウィークの連休は旅館の稼ぎ時、彼女は電話を掛ける余裕もないくらい忙しい。
俺が沖縄旅行に行ければ良いのだが、なかなか経済的に余裕がない。
「GWが明けたら、そっちに遊びに行けるわ」
彼女の方が来てくれた。
「平日でごめんね
土曜日には帰らなきゃいけないから…」
人気観光地の沖縄はシーズンオフがほとんどない。
大型連休じゃなくても土日は予約で一杯になる。
火曜日に来て金曜日に帰る予定だ。
俺も新入社員だから会社を休める訳はなく、出来るだけ早く退社するのがやっとだ。
「お帰りなさい
ご飯にする?お風呂にする?それとも…」
彼女は茶目っ気たっぷりに出迎えてくれる。
「じゃ、じゃあ、ご飯で…」
思わず照れてしまった。
「どう?ゴーヤチャンプルの味は?」
彼女が俺を覗き込む。
「うん、美味い!
…けど、ゴーヤってこんなに美味かったっけ?」
「このゴーヤはうちで育てたゴーヤだもん、その辺のゴーヤと一緒にしないでね」
彼女はどや顔をする。
俺は決意した。
会社を辞めて彼女の旅館を手伝うと!
end