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千分の一話噺

第727章 ミモザの贈り物


庭のミモザの木に今年も花が咲いた。
鮮やかな黄色が春の青空に映える。
「また、この季節になったね」
私の実家の近所にあった小さな公園にもミモザの木があった。
毎年、この時期に鮮やかな花を咲かせてくれた。



「あの…これ!」
中学生の頃、バレンタインにまだ花が咲いてないミモザの木の下で俊也にチョコを渡した。
俊也とは幼馴染みであり、密かに初恋の人でもある。
「えっ?これって…
ありがとう」
「…べ、別に、手作りとかじゃないからお返しとかいらないから!」
これじゃあ、まるでツンデレだわ。
「お返しはこのミモザの木に鮮やかな花が咲いたら…だな」
俊也はミモザの木を見上げた。

しかし、三月なるとすぐに俊也は突然、父親の海外転勤で引っ越す事になった。
「悪い…
何年経つか分からないけど、必ずミモザの木の下でお返しするからな」
俊也はそう言ってくれたけど、何年もしたら私の事なんか忘れてしまうだろう。


何年か経った頃、何気なくテレビの歌番組を観ていた。
新しいロックバンドの紹介している。
「うちのリーダー、イケメンでしょ?
しかもイギリス帰りで英語ペラペラなのに、口下手でライブのMCとかみんな俺がやってるんですよ」
カメラがリーダーらしき人に切り変わった。
「…俊也?」
「リーダーでボーカルの生田俊也です」
ロックバンドのボーカルをやっていた。
「俺の想いが詰まった曲『ミモザの贈り物』聞いて下さい」

~あの日の約束忘れない
ミモザが咲いたら迎えにいくよ
何年経っても俺にはお前だけだから~

サビの歌詞に涙が止まらなかった。
曲の最後に俊也が呟いた。
「今年は待っていてくれ…」


end


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