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千分の一話噺

第73章 宇宙航海時代


人が太陽系外へ進出出来るようになってから数世紀、今や中古の宇宙船でも隣の銀河に遊びに行ける宇宙航海時代となった。
が、未開の宙域への航海は今だ死と隣り合わせであった。
無謀な航海で帰らない者も数多くいた。

その中の一人に私の兄がいる。
未開の宙域を開拓して一獲千金を狙うんだと飛び出したきり戻って来ない。

あれから数年が経ち、私も一人前の宇宙航海士になった。
血は争えないのか、私も外宇宙を自分で航海したかったから…。

お金を貯めて、中古の宇宙船を買った。
(これで私も外宇宙へ行けるわ
やっと兄さんを探せる…)
呆れるほど能天気な兄だったけど、血を分けた兄妹、ほっとくなんて出来なかった。

外宇宙航海船には、様々なタイプがあるが、どのタイプにも必ずA.I.(人工知能)が搭載されている。
そのおかげで僅かなクルーだけで外宇宙へ航海出来るのだ。

私は友人数人と兄の航海ブログと航海予定表を頼りに出航した。
(これを辿れば何か手掛かりが掴めるはず…)
まずは、兄が最後に更新したブログの星に飛んだ。

『氷で出来た星があるなんて驚きや!
生き物はいそうもない
ってか、こりゃ生きていけんやろ』

これが航海ブログとは聞いて呆れる。
はしゃいでいる兄の動画を見て私は頭を抱えた。
私はやる気を無くし帰ろうと思った時、救難信号を捉えた。
「ミツケマシタ
オニイサマ ノ フネデス」
船のA.I.同士が通信し兄の船と分かった。

救助に向かうと兄やクルー達はコールドスリープカプセルで寝ていた。
船のA.I.に遭難した状況を聞くと、兄がA.I.の忠告を聞かず寄り道をしまくり燃料切れになったそうだ。

コールドスリープから目覚めた兄をぶっ飛ばしたのは言うまでもない。



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