第722章 銀世界は薔薇色に
一面の銀世界。
東京に数年ぶりの大雪が降った。
「なんで俺の誕生日に…」
積雪30㎝、雪国ならなんて事のない真冬の日常かも知れないが、真冬でも雪が積もらない東京ではパニックとなる。
ニュースでは、電車やバスなどの公共交通機関の遅延、高速道路の通行止めや入口閉鎖等の情報が流れていた。
「…これじゃあ、来れないよな」
俺の誕生日には彼女が始発の新幹線で上京してくる。
遠距離恋愛だから会えるのは年に数回しかない。
彼女とはネットで知り合った。
俺のブログにコメントをくれたのが始まりだ。
まだ実家にいて飼っていた猫のブログだった。
猫目当てでコメントくれる人は多かったが、その猫が亡くなるとその数はどんどん減り、最後に彼女だけが残った。
猫好きな彼女と初デートには猫カフェへ誘ったが、彼女は猫アレルギーで猫には近寄れないと分かった。
「猫は好きなんだけど触れないのよ…」
意外とそういう人は多いらしい。
「それは…、仕方ないね」
それでもお互い猫好きということで話が盛り上がり初デートは上手くいった。
それからはお互いの誕生日には相手の地元で会うようになった。
あれから五年、俺もそろそろ決断しないといけないのだが…。
『電車止まってない?
無理なら来なくても良いよ』
メールを送ると直ぐに返信が着た。
『絶対に行くから!』
何か今日の彼女は強気に感じた。
昼過ぎに彼女からメールが着た。
『後30分で駅に着くから車で迎えに来て
お願いします』
俺の車は彼女の地元へいつでも行けるよう4WDに変えた。
しかし、アパートから駅までは歩いて10分程度だ。
いつもは歩いて来るし、雪にも慣れてるはず…。
30分後、車で駅に迎えに行くと大きな荷物を持った彼女が待っていた。
「ごめんね
家出てきちゃった」
「へ?…どういう事?」
彼女にそのまま押し切られ一緒に暮らす事になった。
end