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千分の一話噺

第711章 贄の継承


昔、昔の話…。

雨が何日も、何週間も、何ヵ月も降らず、貯水池も川も干上がりだした。
木や草は枯れ、作物は育たず、瀕死の状況となった村の人々は北の山へ向かった。

古き言い伝え…。
古《いにしえ》より龍が宿ると云われているこの山の祠に贄《にえ》を捧げれば、龍が現れ雨を降らせると…。
村人たちは一縷の望みを託して、村長の娘を贄として捧げた。



時は流れ現在…。

地球温暖化の影響で気候は不安定…。
局地的大雨が降ったかと思いきや、1ヶ月も雨が降らないなんて事も多い。

私は地方の言い伝え等を取材するため、某県の山沿いにある小さな町に来ている。
この町には龍にまつわる言い伝えがあった。

町外れに『幸池』と呼ばれる貯水池があり、町の長老と呼ばれる老人に話を聞くと、池の近くには水神様を祀った祠があると言う。

「遥か昔、裏山に龍が現れ、川の水を飲み干してしまい村は水不足になった
そこで時の村長が貯水池の脇に祠を作り水神様を祀り、龍を退治してもらったそうじゃ…」

龍の伝説は各地によくある。
それが正しく伝わっているかは別にして…。

その日の夜、私は駅前のビジネスホテルに泊まった。
寝ようと電気を消し、しばらくして声が聞こえた。
『………を早く…
……が消えて…』
「えっ!!…何!?」
淡い光の珠が浮いていた。

『私は幸《さち》…
もうすぐ私の役目が終わります
次の贄を早く捧げて下さい
龍神様の力が消えてしまいます』
光の珠が私に訴えている。
私の頭の中に贄として龍に捧げられた幸の記憶が流れ込んだ。

「…日本は滅亡する」
私は幸の記憶からそう思った。


end


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