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千分の一話噺

第707章 気が付けば魔界


り~ん、り~ん、り~ん…。

令和の世の中でも現役の黒電話がなる。

ガチャ。

「はい、こちら諸星診療所です
…はい、定期健康診断のご予約ですね
…はい、今年から歯科検診も致しますので、いつも使っている歯ブラシをご持参下さい
…承りました
では、明日お待ちしております」

私は諸星薫《もろぼしかおる》、ここの医師であり、受付であり、薬剤師であり…。
つまり一人で全部をやっているのである。

「検診の予約かな?」
今回は歯科検診も行うので、歯科医のバビロン先生が応援に来てくれた。
「はい、ヴォルガンさんが明日みえます」
「あの暴れん方が検診か?
…珍しいな」
バビロン先生は昔からこの魔界のディアボロス島で歯医者をしていて、住民のほぼほぼ全員の顔を知っている。

私は日本で普通に医者をしていたが、何が原因か分からないけど、この世界に転移したらしい。
始めは驚いたが、島の人(?)達は見た目に反して優しく親切にしてくれた。
人間の医療が魔族(?)に全て通用する訳じゃないけど、さほど違いがなくて医者としてなんとかやっていけてる。


「ヴォルガンさん、まずは身長と体重を測りますよ」
「おう!
でも、薫先生じゃ届かないだろ、俺の肩に乗ってくれ」
身長3m50㎝、体重430㎏の巨漢だ。
体重計は外に1トンまで計れる物がある。
採血する注射器は人間の注射器の数倍もあった。

「ヴォルガン!歯ブラシは持ってきたんだろうな?」
バビロン先生が顔を出した。
「おう!これだろ?」
どう見ても金ブラシだ。
「お前の場合はもっと硬いブラシじゃなきゃダメだ!
岩を噛み砕くくらいなんだからな」
バビロン先生がダメ出しする。
「薫先生、あの不良歯医者に言ってくれよ
これより硬いブラシなんかねぇって!」
ヴォルガンさんは困り顔をする。
「小まめに磨いていれば大丈夫ですよ」
「薫先生はどこかの不良と違って優しいね」
「薫先生、こいつを甘やかしたら録な事にならんよ」
バビロン先生に注意されてしまった。


何で私が魔界《ここ》に来たのか分からないけど、何か平和でずっとこのままで良いと思った。


end


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