• テキストサイズ

千分の一話噺

第71章 雨の日


しとしとと降っていた雨音が強くなってきた。
どうやら本降りになるようだ。


「ツイてないな、せっかくのデートだと言うのに生憎な天気だ」
俺は休日の、少し遅めの朝食を食べながら呟いた。
晴れたらドライブに行こうと言っていたが、これでは予定変更せざるを得ない。
俺は彼女にメールでその旨を伝えた。

『え~(>_<)…この雨じゃ仕方ないかぁ
じゃあ今日は映画にしよっか♪
観たい映画も始まったからo(^-^)o』

何時もはなかなか決め切らない彼女だが、今日は切り替えが早い。
ここ数日の天気予報が雨だったので彼女も代わりのプランを考えていたようだ。



「お待たせ…」
思ったより道が混んでいたため、待ち合わせ時間に少し遅れてしまった。
「遅いっ!15分も遅刻よ!」
案の定、彼女はお冠…。
これもこの雨せいだ。

「ごめん、ごめん
映画終わったら、良いところに連れていくから…」
俺は両手を合わせて頭を下げる。
彼女も本気で怒っている訳ではなく、すぐに機嫌も良くなった。
傘を叩く雨音が少しだけ弱くなった気がした。


「ねぇ良いところって何処なの?」
映画を見終わると、すぐに彼女が聞いてきた。
「行ってからのお楽しみかな」
笑ってはぐらかし、駐車場に向かった。

車を走らせて小一時間。
ドライブの帰りに寄るつもりだった、彼女が行ってみたいと言っていたレストランを予約してある。
フロントガラスを叩く雨音も心なしか軽く感じた。


去年の今日、初めて彼女に会った。
あの日もこんな雨の一日だった。


end
/ 1574ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp