第705章 アニオタに国境はない!
「ぞ~サん♪ぞ~サん♪
オ~はナが♪ナがイのネ~♪
ソ~よ♪かアさんもナ~がイノよ~♪」
朝からちょっとイントネーションが違う童謡を歌いながら、金髪碧眼のイケメンが歩いてくる。
「マイケルさん、ご機嫌ね?
何か良いことでもあったの?」
「ケイコさん!
この歌、キヨシさんに教わりました」
マイケルは歌とは違い流暢な日本語で話す。
マイケルはアメリカ人、今年入社した新入社員だ。
日本のアニメが大好きで来日したアニオタである。
「昨日の『転スケ』と『悪レス』見ましたか!?」
見た目がハリウッド俳優顔負けなだけに、モテモテなのだが、アニメの事になると我を忘れるオタクっぷりにみんなドン引きする。
「どっちも見たよ
転スケに新キャラが出てきたよね」
ちなみに『転スケ』は『転生したら最弱スケルトンでした』、『悪レス』は『悪役令嬢はおっさんホームレスに恋をする』でどっちも深夜にやっているアニメのタイトルだ。
「悪レスも新しい展開が始まりました!」
私もアニオタなので話が合う。
アニメ話になると止まらなくなってしまう。
「仕事始まっちゃうからまた昼休みにっ!」
私もマイケルもそれぞれの職場に別れた。
昼休みになると、同じくアニオタのキヨシも交えてランチタイムだ。
私はサンドウィッチを頬張りながら…。
「…そういえば何で『ぞうさん』なんか教えたの?」
「いや、マイケルが童謡を教えてくれって言うから…
俺、ぞうさんくらいしか知らないんだよね」
キヨシは照れ笑いする。
「童謡は日本人のソウルソングですから、『蝶々』や『チューリップ』も歌えます」
「ソウルソング?…ねぇ」
マイケルの童謡に対しての、分かるような分からないような答えに苦笑いした。
昼休みも三人で濃いアニメ話で盛り上がった。
他の女性社員達がマイケルに話し掛けたそうにしていたが、あまりにコアなアニメ話で遠巻きに見てるだけだった。
おかげで私はみんなから毎日嫌味を言われる。
end