第703章 ハウスダストは感謝されない
「ハ~イ!タロー!
明日はサンクスギビングデーやね!」
アメリカ人のジョンが声を弾ませていた。
「サンクス…?…なんだ?それは?」
俺は首を傾げた。
「ジャパン風に言えば…、農作物祭り?
ネイティブアメリカンと農作物にサンクスする祭りや」
ジョンは何故か英語と関西弁が混ざっている。
「それなら日本の秋祭りも、五穀豊穣って収穫を神様に感謝する祭りだよ」
「ゴッド?ノーノー!
ネイティブアメリカンやないとアカンねん!」
ネイティブアメリカンにこだわるジョンだった。
「…まあ、それはともかく、仕事に行くぞ」
ジョンを連れて現場に向かった。
俺達の仕事はハウスクリーニング、今日の現場は高齢者が一人暮らししているアパートだ。
「タロー、ゴミハウスだったらエスケープね」
「おいおい、仕事なんだから逃げるなんて出来る訳ないだろ
それに不動産屋の話だと依頼者は几帳面な人らしい」
「リアリィ?じゃあ、ミー達要らないやんか?」
ジョンの言う事も分かるが、こればかりは行って見ないと分からないのが正直な話だ。
現場のアパートは築10年程度のまだまだ綺麗な物件だ。
「こんにちは、ハウスクリーニングの者ですが!」
ドアをノックすると、白髪の高齢者が出てきた。
「どうも、今日はよろしくお願いします」
「…では、早速掃除に掛かります」
ジョンと室内に入ったが…。
「………綺麗ですね」
「オー!ベリーベリー綺麗やんか」
室内は目立った汚れもなく整理整頓されていて掃除する所が見当たらない。
「…実は明日、彼女が来るんですよ
だから、プロの目で掃除してほしくて…」
依頼人は少し照れたように答える。
「…彼女ですか?なら徹底的にやりましょう!」
「OK!ミーはおじいちゃんのために頑張ります!」
ジョンも張り切って、隅から隅まで掃除した。
「ありがとうございました
これで彼女を迎えられます」
「明日はサンクスギビングデー!
これでおじいちゃんと彼女さんはベリーハッピーや!」
報酬を貰ってアパートを後にした。
「しかし、まさかあのじいちゃんに彼女がいるとはな…」
「タロー、ラブにオールドもヤングも関係ないね」
まあ、報酬さえ貰えばこっちはそれで良いけど…。
「さて、次行くぞ!」
end