第702章 月下の空騒ぎ
「今日は上弦の月でしょ?」
「そうだね…
所謂、半月だけどこれはこれで趣きがあっていいよね」
私達は空を見上げる。
「…忙しいなぁ」
「…あの動画見た?」
「…これ、美味しい!」
「…疲れたよ」
「…さあ、飲むぞ!」
「…これいくら?」
「…大好きだよ」
地上を見れば、人間達は自分勝手に手元や足元ばかり見ている。
「相変わらず人間は世話しないね」
「空を見上げる余裕もないのかしら?」
「昔はそうでもなかったんだけどね」
「夜でも昼間みたいに明るくちゃ、月や星を楽しむなんてしないんでしょうね」
私達は更に人間を観察する。
「…あそこは我が国のものだ!」
「…条約違反だ!」
「…あの国を滅ぼせ!」
「…我が神は偉大なり!」
「…異教徒を倒せ!」
人間は懲りもせず、戦争を繰り返す。
「…また始まったわ」
「う~ん、人間の歴史は戦争の歴史ともいうからね
戦争に勝つ為に、技術や科学を発展させたんだから…」
「でも、あの宗教ってなんなの?
私達は人間には、手も口も出した事ないじゃない」
「人間が崇めてる神って、僕達とは違うんだよ
人間の心の弱さを利用して仲間を集める為の偶像さ
まあ、ある意味『悪魔の囁き』と同じかな?」
地上はまた騒がしい事になりそうだ。
end