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千分の一話噺

第700章 彼岸花が咲く頃は…


10月、本来ならとっくに秋の気配になる時期なのに、今だに猛暑は納まらない。

「うん、うん…
今年も綺麗に彼岸花が咲いているね」
しかし、家族は誰もいなかった。
「あのぉ…ご家族の方は来られてないんですか?」
隣の人が聞いてきた。
「えぇ…
そちらもまだ?」
周りを見回したが、どこも家族の姿は見えなかった。

「…変ですよね?献花はあるけど…」
「…そうなんですよ、萎びてるんですよね」
二人は顔を見合せ首を捻った。


彼岸花が咲く頃、お彼岸で墓参りの季節なはずなのに…。

「どうやら今年は猛暑が納まらなくて、彼岸花の咲く時期がずれたみたいですね」
隣の人が更に隣の人から聞いてきた。
「…と言うことは、もう墓参りは終わっちゃったって事かな?」
「もう、10月になってるそうです」
俺達、霊は上から彼岸花が咲いたのを見て降りてくる。

いつもならお彼岸前には咲き始めるから、待っていれば家族がやって来る。
「うわぁ~じゃあ今年はもう家族の顔が見れないんだ!?」
「…来年の春のお彼岸までお預けですね」
ちょっとショックだった。

周りの霊も残念そうな表情で上っていく。
「仕方ない…上がるか…」
春のお彼岸はいつも通り咲いて欲しい。


end

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