第695章 滅亡へのカウントダウン
俺達は半壊した建物の中で束の間の休息を取っていた。
「昔、日本って国ではこの時期を『長月』と呼んでいたそうだ」
空に輝く月を見ながら仲間のミフネが呟いた。
「ながつき?なんだそれは?」
俺は首を傾げる。
「長い月と書くんだが、昼間より夜が長くなってきた時期だから『アキの夜長』と言っていたらしい…
『アキ』が何なのかは分からないがね」
ミフネは歴史が好きらしい。
「太陽が出てる時間より月の出てる時間が長いから『長月』か…
そんな事に気付くなんて平和な時代だったんだな」
西暦21XX年、南極の凍土が崩壊し、中から虫型のモンスターが現れた。
牛ほどの大きさがあるカマキリに似たモンスターは空も飛べて夜に活動する。
人間を襲いながらあっという間に全世界へ広まった。
当初は武器を使う人間が優位だったが、モンスターの繁殖力は凄まじく、数に勝るモンスターがじわじわと勢力を広げていった。
数十年でオーストラリア、南米大陸は壊滅、約百年で世界の70%はモンスターの勢力となった。
国という枠組みはなくなり、人類の存亡は個人の力だけが頼りとなった。
「何でこんな世界になっちまったんだ?」
俺達は仲間十数人で次の街を目指していた。
始めは数人で逃げ出したが、街を移る度に生き残っている人達を加え、安全な所を探し移動している。
奴らは夜行性だから、昼間は移動し夜は交代で見張りをしながら休む。
「出たぞっ!!」
俺達と反対側を見張っていた仲間が叫んだ。
すぐに銃声が響くと休んでいた仲間も飛び起き武器を構える。
「何匹いる!」「7~8匹だ!」「中に入れるな!」
仲間達が叫びながら応戦する。
何とか撃退したが、夜明けまで誰一人眠れなかった。
俺達に安息の日は訪れるのか?
今はとにかく生き残る事だけを考えるしかなかった。
end