第694章 猫に小判?
その日は、台風が近付いていて大荒れな1日だった…。
「早く乗って!」
俺は車に乗り込むと、相棒は車のタイヤを鳴らしながら急発進した。
地下駐車場を出ると外は豪雨だ。
「…上手くいったな
まあ、俺に掛かればチョロいもんよ」
「何言ってんのよ!
予定より15分もオーバーしてるじゃない!」
窓を叩く雨音が大きくなりワイパーが世話しなく動く。
「仕方ないだろ
まさか奴が潜んでるとは思わなかったんだから…」
俺は遅れた理由を話した。
「また!?何で毎回毎回出くわすのよ!?」
相棒は呆れ顔だ。
「俺が知るかよ
奴が出てこなきゃ時間通りに終わったんだ」
言い訳にしか聞こえないな。
「あんた、いい加減にその猫嫌い治しなよ
アレルギーとかじゃないんだから…」
相棒に言われなくてもどうにかしたい。
「うるせぇ…トラウマなんだよ」
俺は顔を横に向け、雨に煙る街明かりを眺めた。
あの日もこんな台風の日だった…。
まだガキの頃、雨で外で遊べないため家の物置小屋に入った。
暗がりで光る猫の目を見つけ近付いた。
今思えば、毛を逆立てて今にも飛び掛かる姿勢だったが、その頃はそんなことも知らず俺は身を屈めた。
俺にはその後の記憶がない。
物置小屋で大泣きしている俺を親が見つけて、すぐに病院に担ぎ込んだ。
顔や腕に無数の引っ掻き傷があり、血だらけだったそうだ。
それ以来、猫を見るだけで恐怖で足がすくむ様になった。
それなのに、なぜか猫は俺を見つけると寄ってくる。
この度に俺は逃げ回る事になるのだ。
本当に何とかしないと仕事が出来ない。
end