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千分の一話噺

第688章 かき氷には気をつけろ


地元の夏祭りに出掛けたら、偶然こいつと出会った。

「毎日、暑いとしか言葉が出ないな」
「だから今、こうしてかき氷を食べてる」
こいつはイチゴのかき氷を食べていた。

「忙しくて大変だろ?」
「…まあ、ゆっくり食べてると溶けるからな」
かき氷を口いっぱいに頬張った。

「いや、そういう事じゃなくて…」
「あっ…頭がキーンと…」
こいつはこめかみ辺りを押さえた。

「何やってんだか?
他にやることあるだろ?」
「では、かいだん話しを一つ…
一段…二段…三段…………十七段…
やっと着いた」
いきなり怪談を話し出した。

「…ちょっと待て!
一段足りないとか多いとかじゃないのか?
怪談話しだろ?」
「階段話しだよ
うちの研究所の階段はいつも一緒だ」
怪談じゃなく階段の話しだった。

「お前は昔からそうだよな」
「何がだよ?」
こいつは首を傾げる。

「突然突拍子もないとこ言ったり、期待させといて何もなかったり…
子供の頃、夏休みの宿題一緒にやろうぜって言ったのにさっさと一人で終らせただろ」
「…そんな事あったか?
お前はなんでも良く覚えてるよな」
こいつは親指を立てて見せる。

「お前は特に自分の事となると無頓着なんだよ」
「そうか?俺は普通だと思うぞ」
ニカッと笑った。

「でも、今回は期待して良いんだよな?」
「うーん、分からん…
俺が決める訳じゃないからな
あっ…キーン…」
また頬張り過ぎたようだ。



こいつはいつもこんな調子だ。
のほほんとしてると言うか、飄々としてると言うか…。
天才はどこか凡人とは違うのだろう。

こいつは俺の親友で、今年のノーベル物理学賞最有力候補だ。


end

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