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千分の一話噺

第69章 平和


「ん~」
俺は目一杯伸びをした。
「青い空、白い雲…
気持ちいいなぁ~」

見上げれば、どこまでも青い空に綿飴のような真っ白な雲が一つ浮かんでいる。
何てことのない有り触れた日常に見つける小さな幸せの時間…。

そんなのんびりとした空気を一変させる光景が飛び込んできた。
見上げていた青空に突如ひびが入り、飴細工のように粉々に砕け散ったのだ。
青かった空は一瞬にして真っ赤に変わってしまった。
俺は伸びをした姿勢のまま固まっていた。

(何?何が起こった?)

一変した光景に理解が出来なかった。
そこにサイレンが鳴り響いた。
ビクッとして周りを見たら、たくさんの人が逃げ惑っていた。
「あんたっ!そんな所に突っ立てたら空爆で死んじまうぞ!
早く避難しろ!」
俺は腕を引っ張られ訳も分からずに走った。
「ちょ、ちょっと!何なんだこれは!」
「B29の空爆だ!死にたくなかったら走れ!」

(B29?空爆?)

俺は走りながら周りを見た。
あちこちで火の手が上がり、空まで燃えているように見えた。

どこをどう走ったかなんて覚えてないが、なんとか河原にたどり着いた。
「はぁはぁ…ここまで来れば大丈夫だろ…」
俺を引っ張ってくれた人はその場に座り込んだ。
周りにもたくさんの人が座り込んでいる。
「はぁ…はぁ…」
俺も息が上がりへたり込んだ。

しばらくして落ち着いてからお礼を言った。
「ありがとうございました
ところで、何で空爆なんてされるんですか?」
「何言ってんだ!?今は戦時中だぞ!」

(戦時中?戦争?)

「日本が戦争!?どこと!?」
「米国に決まってるだろ!」
俺はその答えに耳を疑った。

(アメリカ…、B29…、空爆…)

俺は第二次世界大戦末期の東京にいた。
しかも東京大空襲の真っ只中に…。
見上げた空は炎と煙りで赤黒く見えた。


end
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