第676章 続・幼馴染みの瞳に何が映る?
実家に戻って三日目、今朝もロボット掃除機が動き出すと母親から嫌みを言われる。
「田中さん家の良子ちゃん、二人目だって!」
「何の話し?」
「…子供よ
私も孫の顔がみたいわぁ」
私は自分の部屋に戻って出掛ける用意をした。
「…出掛けてくる」
やれ、好い人はいなのか?やれ、結婚はまだか?寛げやしない。
私まだ27よ、都会じゃあ三十路でも何も言われないのに…。
「おっ、どこか行くのか?」
ヒロシと出くわした。
「あんたには関係ないわよ」
「何むくれてんだよ」
ヒロシに当たっても仕方ないのは分かってるけど…。
「むくれてない!」
「はいはい、これでも食べろ」
ヒロシはキャラメルを差し出した。
「まったく…ヒロシは変わらないわね」
「お前だって、変わらずがさつじゃねえか?」
「う、うるさいわね!」
「どうせ、おばさんに結婚はどうした?とか、孫はまだか?とか言われたんだろ?」
見透かされてる。
「…何なのよ、あんたは!?」
「ちょっと畑に付き合えよ」
ヒロシの家は農家で後を継いで頑張っている。
家の裏側には広大な畑と田んぼがある。
今の時期は田んぼでカエルが騒がしいくらいに鳴いていた。
「どうだ、新しいビニールハウスを建てたんだ」
かなり大きいビニールハウスが二棟並んでいる。
「ふ~ん…、私にはよく分からないよ」
「お前の目は節穴か?
これは最新のハウスだぞ」
ヒロシが力説するが、私にはビニールハウスなんてどれも同じに見える。
「…これを見せたかったの?」
「そうだ!ハウス栽培なら収入も安定する
これで嫁さんを向かえる準備が整った!」
「…何それ?」
「香奈恵、俺の嫁さんになれ!
今すぐじゃなくて良い…、仕事を続けたいなら続けても良い!だから…」
突然の告白なのに、なぜか涙が溢れだした。
「…な、何よ…突然…」
「俺は昔からお前だけしか見てなかったんだよ」
しばらく涙が止まらなかった。
「…ったく、泣きすぎだぞ
化粧がぐしゃぐしゃ…」
「…びっくりしたんだからしょうがないでしょ!
もう、睫毛まで取れちゃったじゃない…」
照れ隠しもあり、まともにヒロシの顔が見れなかった。
end