第674章 平和交渉が出来るなら…
何もなかった俺達の街は今、UFOの話題で持ちきりだった。
それはテレビやマスコミで取り上げられたからだ。
「俺はUFOに乗せられ、奴らの基地に連れていかれたんだ
場所は分からないが、UFOが何機も停まってた
UFOの表面は真っ白で真珠みたいにキラキラしてたぞ」
俺の遊び仲間の一人が二日間行方不明となり、見つかった時に言い出したことだ。
「UFOだ?夢でも見てたんだろ?」
俺を始め誰もそんな与太話を信じなかった。
「奴らは俺の身体を隅々まで調べて、変な光を当てたんだ
そしたらどうだ、あれだけ好きだったタバコが止められたんだ」
彼は自他共に認めるヘビースモーカーで、肺癌も発症していた。
それでも彼は…。
「タバコ止めるくらいなら死んでやる」
と、タバコを止める事はなかった。
そんな彼がタバコを吸わないのを見て、俺はもしかして身体に異変があるのかと病院で調べさせた。
レントゲンを撮った医者が驚愕した。
「これはっ!!!
………治ってますね、肺癌が…」
医者も首を傾げるしかなかった。
それが話題となりテレビやマスコミが殺到することになった。
『宇宙人が癌を治した!』
そんな見出しが躍ると、全国から癌患者も集まる。
何にもなかった俺達の街は一躍『UFOの街』として有名になった。
しかしそれ以来、UFOは現れず、いつしか元の何もない街に戻った。
肺癌が治った彼はどうしているかと言うと、今は胃癌で入院している。
「UFO来てくれ~!」
毎日、空に向かって祈っている。
end