第671章 予言も財宝も夢幻の如く…
「よお、ノストラダムスって知ってるか?」
俺が歯磨きしていると相方が聞いてきた。
「…ナサタラ…ハマス?」
「…口ゆすいでから喋れ!」
ガラガラ…ペッ!
「あれだろ?書いた本が昭和の時代に予言書だって騒がれた奴…
結局は20世紀末の人類滅亡がなかったから、ほぼほぼ忘れ去られてるよな」
世紀末は俺も子供の頃に何か起こるんじゃないかと心配した覚えがある。
「その予言書って云われる本が本当は財宝の在処を示しているらしいんだ」
「…財宝?誰の?」
「あのレオナルド・ダ・ヴィンチだ!」
どこで得た情報か分からないが、相方はどや顔する。
「それ…どう考えても眉唾だよな」
俺は眉を寄せる。
「この連休中に本の謎を解いてダ・ヴィンチのお宝を手に入るぜ!」
相方はノストラダムスの本を持って力説する。
「…でもよ、それって原本じゃなきゃ無理だよな」
「あっ…」
「あっ…、じゃねぇよ!
少しは考えろ!」
俺は頭を抱える。
「くそっ!あの親父、騙しやがったな!」
相方は本を床に叩き付けて悔しがる。
「誰に吹き込まれたんだ?」
「駅前の古本屋の親父!」
相方は拳を握り締めている。
「あそこの親父か…
古本売るためにあの手この手のホラ話をするって有名だからな…
今さら引っ掛かる奴がいるとは珍しい」
我が相方ながら情けない。
「あぁ…三千円もしたのにゴミかよ…」
相方は古本を拾って嘆いた。
「そうでもないさ…
お前のバカさ加減が分かったんだからな」
「うっせぇわ!」
相方は古本を俺に押し付ける。
こんな相方でも仕事では最高の相棒である。
end