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千分の一話噺

第67章 噂のアイツ


今年も新入社員が何人か入ってきた。
その中に、うちみたいな中小企業には似つかわしくない奴がいる。

採用試験の時から話題で、「なんでこんな優秀な学生がうちに?」と社長が首を捻ったと言うほどだ。
国立大学から大学院を経て、なんだかの博士号まで取っているらしい。
そんな超エリートの新入社員がうちの部に配属なった。

(正直困るよ、そんなのと比べられたら太刀打ち出来ない。)

「よろしくお願いしますぅ」
朝礼で挨拶した超エリートは、ひ弱で根暗なインテリかと思ったら、マッチョなボディで腰の低い好青年。

(ますます困るよ、体力でも勝てないぞ。)

しかし何か違和感があった。
しかもどこかで見たような気がする。

「先輩、いろいろご指導お願いしますぅ」
俺に挨拶した超エリートはマッチョなボディに似合わない高めの声、ナヨッとした仕草…俺は思い出した。
「あっ!お前っ!」
俺が声を上げた瞬間、超エリートのゴツい手が俺の口を塞いだ。
「しーっ、せ・ん・ぱ・い♪」
キラキラした目でウインクするこいつのバックには満開の花が咲いてるように見えた。

(こいつ、新宿二丁目の…。)

数ヶ月前、会社の先輩に連れて行かれたオカマバー。
そこで俺にやたらと絡んできたオカマだ。

「あそこでバイトしてた事は二人だけのひ・み・つ♪」
俺にしか聞こえないくらいの声で囁いた。
(こいつ、まさか俺を追いかけて来たのか!?)
先が思いやられるよ。


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