第658章 お使いには気を付けろ!
派手なネオン街を横にそれ、ほの暗い横道を抜ければ、怪しい裏道に出る。
ホームレスのオッサンが店の裏でゴミを漁る。
「ちっ!…しけた店だな」
「ようオッサン、儲け話があるんがやらないか?」
声を掛けるのは誰でも良かった。
「…俺に何させるつもりだ?」
オッサンは警戒しながらもやる気はあるようだ。
「なに、簡単なお使いだよ
これをある人物に渡して、土産を持って帰れば良いだけさ」
俺は持っていた包みを見せた。
「…で、いくらくれるんだ?」
「10万やるよ」
オッサンが包みに手を伸ばした。
「おっと、まだ話は終わってないぜ
…まあ、やる気があるなら着いてきな」
包みを引っ込め、歩きだした。
裏道を右に左に、しばらく行くと如何にも訳ありな輩が出入りしている宿がある。
「相手はあそこの三階、東の角部屋にいる
…これを渡して土産を受け取ってこい
ただし、中身は見るなよ
泥棒も良くないぜ
お前だって命は惜しいだろ?」
俺は上着を開いて懐の拳銃を見せた。
「わ、分かってるよ
さっさとそれよこせ!」
俺はオッサンに包みを渡した。
オッサンは包みを持って宿に入って行った。
しばらくすると別の包みを持って戻ってきた。
「…ご苦労さん」
俺は手を出したがオッサンは包みを渡さない。
「…金よこせよ」
「ほらよ」
俺は金の入った封筒を放り投げた。
オッサンは包みを俺に渡し金を拾う。
「へへへ…こんな仕事ならいつでもやってやるよ」
オッサンは金を確認してからポケットに突っ込むと小走りで去っていった。
21世紀後半、人類は新型ウイルスに侵された。
通称「カカオウイルス」と呼ばれ、チョコレートやココアなどカカオを含む食品に対して身体が拒否反応を示し死に至らしめる。
全世界でカカオ製品は禁止され、世の中からチョコレートが消えた。
しかし数年後には闇チョコレートが出回る様になり、反社会的組織の資金源となっていた。
end