第657章 家族団欒
私には二人の子供がいる。
顔も声もスタイルも瓜二つな双子の姉妹が…。
姉の亜弥は気が強く、妹の麻弥は我が強い。
黙っていれば私でさえ間違う程そっくりな二人だが、何故か食べ物の好みがまるっきり違うので困る。
おやつのお菓子でさえ…。
「私、ビスケット!」「私はクラッカー」
似てはいるけど違うお菓子だ。
「何でお姉ちゃんは、そんなボソボソしたのが好きなの?」
「クラッカーなんてパサパサして美味しくないわよ」
どっちもどっちのような気がする。
ご飯の時も…。
「私、ソース!」「私は醤油」
トンカツに掛ける調味料で言い争う。
「麻弥、トンカツにはソースでしょ!?
とんかつソースって言うくらいなんだから!」
「お姉ちゃん、油っこいトンカツにはさっぱりした醤油の方が合うのよ」
「トンカツは洋食よ!
醤油は和食でしょ!?」
「お姉ちゃん、甘いわね
トンカツは洋食のカツレツを日本人がアレンジしたから和食よ」
普段は仲が良いけど、食べ物の好みになるとどちらも譲らない。
「じゃあ、カツ丼はどうなのよ!
あんた、ソースカツ丼好きでしょ!?」
「お姉ちゃんだって、カツ丼は玉子とじじゃない」
食べ始めるまで30分は言い合わないと気がすまないらしい。
鍋をする時は更にヒートアップする。
「私、チゲ鍋!」「私は胡麻豆乳」
最近は二種類のスープを使える鍋があるから良いけど…。
「辛いのが苦手なんて、麻弥はまだまだ子供ね」
「激辛ばかり食べて舌がバカになってる方が子供よ」
どっちもまだ10歳の子供なんだけど…。
「何で麻弥はお肉を入れないの?
牛肉の旨味が出て美味いのに!」
「やっぱりお鍋は海鮮よ
魚介のダシが出て美味しいわ」
私はどっちも食べれるから良いけど、材料用意するのが大変なのよね。
「お姉ちゃん、うどんは最後に入れないと溶けちゃうわよ」
「良いの!うどんはお肉や野菜と一緒に食べるから美味いのよ!」
なんだかんだ言っても家族揃って楽しい食事が一番だわ。
「「お父さん!直箸は止めて!」」
「はい!…ごめんなさい」
二人揃って注意され、しょげる父親であった。
end