第655章 お弁当は質より量よ
平日の朝はどこの家庭も忙しい。
「きゃ~遅刻!遅刻!
ママ、お弁当は!?」
里香は階段を駆け降りキッチンを覗いた。
「そこにあるでしょ?
何でもっと早く起きないの!?遅くまで起きてるから…」
「…い、行ってきま~す!」
里香は弁当をカバンに押し込み、母親の説教から逃げるように家を飛び出した。
手袋をはめて自転車に跨がる。
里香の通う地元の高校は自転車で3~40分。
「急がないと本当に遅刻しちゃう!」
必死になって自転車をこいだ。
「はあ、はあ…なんとか間に合ったわ」
遅刻は回避出来た。
「里香、息切らしてるけど大丈夫なの?」
親友の朋子が心配した。
「…だ、大丈夫よ
…それより朋子、何かお菓子ない?
朝ごはん食べ損ねた…」
「なら、お弁当食べたら?」
「お弁当はお昼の楽しみなの!」
「…今日はのど飴しか持ってないよ」
「のど飴でもいいからちょうだい!」
「…はい、…でも、午前中に体育あるけど?」
「…今日は体育館でバレーボールでしょ
大丈夫よ………たぶん」
里香は朋子からのど飴を貰った。
のど飴だけで体育を含む午前中の授業をふらふらになりながらも終えると、待ちに待った昼休み。
「…やっとお弁当食べれ…る!?」
「…今日のお弁当、…スゴいわね」
父親の弁当と間違えて持ってきていた。
「………でも、お腹空いてるからちょうど良いかも」
end