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千分の一話噺

第653章 三十路男は引っ越しで運を掴めるのか?(後編)


アパートの名前は『奥多摩荘』、土居中村の端っこで裏はもう山だ。
東京とはいえ、奥多摩では熊や猿が目撃される。
ここでも猪や野ウサギが出て畑を荒らすらしい。
アパートの外見は古いが内装はちゃんとリフォームされていて、今までいたアパートと遜色はない。
バス・トイレ付きだったら文句無しなんだが…。

奥多摩では、冬場は雪が積もることも珍しくない。
裏起毛のシャツやズボンで防寒してないと外には出れない。
最寄りの奥多摩駅までは、歩くと30分以上は掛かるが、仕事はリモート可能なので出社は月に数回で済む。
仕事始めも今年はリモートだ。

唯一の問題が彼女に会えない事だ。

彼女は会社の近くで弁当屋を営んでいて、そこの弁当がめちゃくちゃ美味いのと彼女の笑顔に癒されていた。
彼女を知ってからは、毎日通って談笑出来るくらいになった。

引っ越してしばらくは毎日弁当を買いに出掛けていたが、それもなかなかしんどい。
本当に運が上がってるのかと悩んでいると吉田が遊びに来た。

「どうだ?何もかも上手くいってるだろ?」
「う~ん、仕事は問題ないんだがなぁ…」
「何だよ?歯切れが悪いな
まだ彼女を呼んでないのか?」
「こんなことに呼べるかよ!?」

正直、こんな田舎に住んでるなんて彼女にはなかなか言えなかった。
「お前は今、最強の幸運の持ち主なんだぜ
彼女も断りはしないさ」
吉田の言葉に背中を押される形で開き直ることにした。

「あの…、実は奥多摩に引っ越したんですよ」
「まあ…私の実家は奥多摩の土居中村なんですよ」

これは偶然なのか?強運の賜物なのか?
彼女との仲が急速に近付いたのは言うまでもない。


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