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千分の一話噺

第648章 狐の恩返し?


「はぁ、今年も赤字ね…
折角、温泉があるのに何でお客が来ないの?」
年末、大晦日に女将は頭を抱えていた。

ここは都心からも近いのになぜか人が来ない温泉地。
天然温泉掛け流しの温泉宿が一軒ある。

「今年こそ、お客様がたくさん訪れますように!」
元日、初詣で女将は精一杯祈った。

その夜。

『我をもっと大切にせよ
さすれば、願いも叶うだろう』

夢でお告げを貰った。
「…我って言われても何の事?」
女将は一番古い番頭にそれとなく聞いてみた。
「それは多分、源泉の脇にある祠のことじゃないかな?」
言われて思い出した。
「そう言えば、おじいちゃんがよくお供えしてた…」
「先々代までは大切にされてましたが、本館を建て替えてからは…」
女将は早速、祠を見に行った。

朽ちた祠の中には木彫りの白い狐像が納められていた。
「…これが神様?……白い狐……白狐!」
女将は天命を受けたように閃いた。

朽ちた祠は立派な社に建て替え、白狐神社として、温泉も白狐温泉と名前を代えた。
女将は毎日お供えを欠かさず、町起こしを兼ねて白狐のキャラクターが作られるとこれが大当たりし、神社の参拝者が急増した。
と、同時に温泉利用者も増え、旅館の宿泊者も増えた。

『我の力、思い知ったか!
これからも我を大切にすれば安泰であるぞ!』


end

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