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千分の一話噺

第646章 革命の魂は受け継がれる


私は焼き芋が大好きだ。

『石~焼~き~芋~♪焼き芋!
ほっかほっかの焼き芋だよ~♪』

お馴染みのメロディが流れ、軽トラの販売車がやって来る。
売ってるのは大抵がおじさんだ。
最近は街にお洒落な焼き芋専門店が出来たりしているが、販売車の姿は今も昔も一緒…。

私はそれが気に入らない。

そこで…。
「私が焼き芋販売車に革命を起こしてやる!」
思い立ったが吉日、今までの仕事を辞めて、その退職金で販売車を買った。

今までのような軽トラではない。
ピンクの古いVWビートルの後ろ部分をトラック仕様に改造し焼き芋用の窯を乗せる。
流すBGMもポップなコーラス風にアレンジし、コスチュームも派手で可愛い物にした。
寒さ対策で、足元のブーツとサツマイモっぽい赤紫のコートを用意した。

「これで準備万端ね」

早速、サツマイモを窯に入れて街に出た。
「…まずは、住宅地よね」
購入者は子供から高齢者まで年齢は関係ないが、圧倒的に女性が多い。
メロディを流し、ゆっくり走る。

しかし、誰からも声が掛からない。
「おかしいわね?」
遠巻きに見られてる気もするけど…。

小さな公園の脇に停めて営業する。
「おや?これは何かな?」
おばあちゃんが寄ってくれた。
「焼き芋ですよ」
「そうなのかい?焼き芋屋には見えないねぇ」
おばあちゃんは焼き芋一本買ってくれた。
結局、初日はおばあちゃんの一本だけだった。
「…意外と厳しいわね」
私の革命はまだ始まったばかりだ。


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