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千分の一話噺

第643章 昭和な暮らし


めっきり冷えてきたので炬燵を引っ張り出した。
「やっぱり炬燵にはミカンだよねぇ~」
炬燵に足を突っ込み、ミカンに手を伸ばす。

バシッ!

「痛ぇ!ミュー、これは俺のミカンだ
それにお前、柑橘類苦手だろ?」
炬燵の上で寛いでいた猫のミューに手を叩かれた。
ミューは自分の近くある物は、全部自分の物と思っているようだ。
手を出そうとすると必ず叩かれる。
「にゃ~」
ミューは勝ち誇ったように鳴いた。
まあ、猫は基本的に自分本意だから仕方ない。


「ミカンには紅茶かな…」
とりあえずミカンはミューが見張ってるから、キッチンに行ってお湯を沸かす。
最近は電気ケトルが流行ってるようだが、うちは今でもヤカンを使っている。
沸かしてる間に紅茶のパックを探す。
「たしかまだあったはず…」
ダージリンのティーバッグが一つだけ残っていた。
「ラッキー!まだ残っていた…」
紅茶を本格的に淹れるにはいろいろ手順があるのだが、ティーバッグなら手軽で簡単なもんだ。


紅茶とミューのオヤツを持って炬燵に戻る。
「これやるから、ミカンは返してもらうぞ」
「みゃ~♪」
ミューは喜んでミカンを譲ってくれた。
手間の掛かる奴だ。


テレビを点ける。
画面が点くまで時間差がある。
30年以上使っているブラウン管テレビだ。
アナログ放送が終了しているからデジタルチューナーを接続しないと見れないのだが、このアパートはケーブルテレビと契約してるのでこれでもまだ番組を見る事は出来る。

テレビの上にはいつの間にミューが寛いでいる。
ブラウン管はしばらくすると適度に熱を持つので、ミューにとっては冬場の寛ぎ場所になっている。
「そんな座り心地の悪い場所より炬燵の方が良いと思うぞ」
ミカンを剥いて一房口に放り込んだ。


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