第639章 定年退職
私も、もう年金を受け取れる年齢になる。
誕生日が来れば会社を定年退職だ。
希望すれば単年契約ではあるが仕事を続けられる。
誕生日当日。
「今日をもって定年退職となります
長い間、ありがとうございました」
職場の仲間に挨拶を済ませ、最後の有給を使って半休とさせてもらった。
「さて、準備に掛かるか…」
家に戻るとエプロンを付けてキッチンに立つ。
小麦粉、砂糖、牛乳、卵などの材料を並べ調理を始める。
「あなた、仕事に未練はないの?」
妻が問う。
「うむ、仕事は仕事で楽しかったけど、それよりもお前とやるケーキ屋の方が絶対に楽しい」
「はいはい、じゃあスポンジ焼きましょ」
生地を型に流し入れオーブンで焼く。
妻は昔からケーキやお菓子作りが好きでいつかは店を出したいと思っていたそうだ。
私が定年で退職すると知って、一緒に店をやらないかと言われた。
「焼けたスポンジは上下半分に切り分けて…」
スポンジケーキの間にカスタードクリームとフルーツを挟んで、スポンジケーキ全体にホイップクリームを塗る。
ケーキ上部をフルーツやホイップクリームで飾り付けてホールケーキが出来上がった。
「なかなかの出来だと思わないか?」
「これじゃあ、まだお客さんに売れるレベルじゃないわね」
私はまだまだ進化しないと駄目な様だ。
end