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千分の一話噺

第638章 ハロウィンに花束を


ハロウィンの夜、一人の男が人気のないビルの屋上にいた。

ロイ・グラハムは小さい会社を経営していた。
父親が若くして亡くなり跡を継いだ会社だ。
「もう、親父に会わす顔がない…」
ロイは飛び降りるつもりでいた。

しかし…。

「な、なんだ!?」
ロイの目の前に女性が降りてきた。
そう、ゆっくりと雪が舞い降りる様に…。
「…どこから?…いや…とにかく…」
ロイはその女性を受け止め、安全な場所に下ろした。
「…空から?…どうやって?」
もう、飛び降りるどころではなくなっていた。

しばらくすると女性は気が付いたが、女性は記憶をなくしていた。
「私は…誰?」
ロイはこの不思議な女性を保護することにした。
(空から降ってきたなんて普通じゃない…
しかし、放っておくわけにもいかないし…)
「記憶が戻るまで私の家で暮らせばいい」
女性は不安な顔をしていたが、ロイの申し出に笑顔で答えた。

女性は少しずつだが記憶を取り戻していた。
「名前はイリス…
こことは違う世界にいた気がする…」
ロイは、イリスが空から降ってきた事や、銀髪赤眼の容姿から人間ではないと思っていた。
しかしロイは、いずれ元の世界へ帰ってしまうと思いながらもイリスに引かれていった。

月日は流れ、またハロウィンの夜になった。

「一年前、ここでイリスと出会った」
「…ロイ、今までありがとう
私、もう記憶戻ってるのよ」
「…薄々気付いてたよ」
「私は悪魔…、去年『冥界の門』に間違って落ちてしまって記憶をなくしていた
今夜、門が開いたら私は魔界に戻るわ」
「…悪魔なら私の魂を持って行ってくれないか?」
「そんな事出来るわけないじゃない…」
「去年、私はここから飛び降りるつもりでいた…
父親から引き継いだ会社を潰してしまい生きる望みがなかった
そこへイリスが降ってきたんだ
イリスがいないのなら生きてる意味はもうない」

ロイは持ってきていた花束を差し出した。
イリスは花束をビルから投げ捨てた。
「私は悪魔なのよ!
何もしないで魂は貰えないわ
あなたの望みを言いなさい!」
「…私はイリスと一緒に生きたい」
イリスはロイに抱きつき契約のキスをした。


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