• テキストサイズ

千分の一話噺

第634章 豆腐屋の誇り


ここに今にも潰れそうな豆腐屋があった。

一時期は美味い手作り豆腐として流行っていた事もあったが、時代の流れや材料の高騰などで経営は火の車状態だ。
そこで俺は地域振興クーポン券が使えるように加盟申請しようと思っていた。

しかし…。
「お客は美味ければ買ってくれるんだ
そんなもん必要ねぇ!」
豆腐一筋50年、頑固一徹な親父に反対され棚上げとなった。


しかし、そんな親父が亡くなり、俺ではこれまでの豆腐は作れない。

「どうする?俺の豆腐じゃ親父の豆腐には敵わない…
このままじゃあ、うちは終わりだ」

そんな俺を妻が叱咤激励する。
「何弱気になってるのよ!
お義父さんに厳しく仕込まれて、お義父さんの一番近くで見ていたあなたが出来ない訳ないでしょ!?」
「そうは言ってもなぁ…
俺の豆腐は親父に認められた事がないんだぜ」
俺には自信がなかった。

「お兄ちゃんには『俺のがんも』があるじゃない!」
妹が背中を叩いた。
親父から任されていたのは厚揚げやがんもどきだ。
特にがんもどきは好評で『俺のがんも』と命名して売り出している。
「がんもどきも豆腐から作るんだから、その豆腐が出来ないんじゃ駄目だろ?」
頭を抱えていた俺にお袋が…。
「…前にお父さんが珍しく酔っ払ってね、「幸一の奴、俺より美味いがんもどきを作る様になりやがった…もうすぐ豆腐も俺より美味くなるんだろうな」って嬉しそうに言ってたわよ」
「あの親父が?…そうか…、じゃあ死ぬ気で頑張るしかないな」
俺は覚悟を決めた。

親父が作り上げた最高の豆腐を、俺は必ず越えてみせる!


end

/ 1580ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp