第633章 天才は…
「天才は忘れた頃にやって来るって言葉を知らんのか?」
前からどこか可笑しな事を言い出す奴だったが…。
「それは、『天の才能』じゃなくて『天の災い』の方だ」
「そんなのどっちだって良い!
俺は天才なんだからな!」
今回はなんか自信あり気だ。
「じゃあ、何の天才だよ?
学校の成績は俺の方が上だぜ」
「ふん、そんな成績など生きていく上では何の役にも立たない
俺の才能はコレだ!」
目の前に出されたのは…。
「…貯金箱?
貯金の天才とでも言うのか?」
「これだからお前は凡人なんだよ
大事なのは中身だ」
貯金箱を何度か振って、お金が入ってる事を確かめた。
「それゃあ、貯金箱の中身はお金だから大事だよな」
「だから、こんな貯金箱なんて物はっ!」
叩き付けて壊すのかと思ったら、裏蓋を開けてお金を取り出した。
「…それでどうするんだ?」
「ふっ、黙って着いてきな」
お金をポケットに入れ向かった先は…。
「おばちゃん、みたらし団子二本!」
近所の団子屋だ。
「俺の奢りだ」
一本のみたらし団子を渡された。
「…サンキュー…で、みたらし団子が何なんだ?」
「まだ分からないのか?
みたらし団子は美味い、作った奴は天才に違いない
だから、それをお前に奢ってやる俺も天才なのだ!
はっはっはっ!」
俺は黙ってみたらし団子を食べた。
end