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千分の一話噺

第63章 チューリップの咲く頃


「お前の夢はなんだ?」

高校を卒業する頃、恩師に聞かれた時に私は何も答えられず俯いてしまった。
まだ将来も見えず、周りのみんなが進学するから私も進学を選んだだけ…。
「まあ、大半の学生がそんなもんだ、気にするな
これは卒業祝いだ」
そう言って机の上にあったチューリップの鉢植えを渡された。
「お前、花好きだったよな
チューリップの球根は上手く世話すれば二、三年は花を咲かせる事が出来るそうだ
その間にやりたい事を見つければ良いさ」


これを機に私は花の勉強を始めた。
思えば小さい頃、お花屋さんに憧れ、「お花屋さんになる!」と言っていたのを思い出した。

チューリップは花がくたびれ出したら種を作らせないように花茎を切り、葉だけ残し球根に栄養を溜め込ませる。
葉が枯れ出したら掘り起こし、乾燥させ保管すれば翌年また花を咲かせる。
もちろん必ず花が咲くとは限らない。
球根にどれだけ栄養を貯められるかで決まる。

理屈は分かったけど、ちゃんと咲いてくれるだろうか?


あれから一年…。


「先生!咲きましたよ!」
鉢植えのチューリップを持って母校に行った。
なんか、夢が見えてきた気がする。


end
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