第625章 未来の台風
秋は台風の季節、太平洋高気圧が弱まるため日本列島を直撃するコースが多くなる。
しかし、今(25世紀)の台風は昔とは違う物になっている。
『只今、台風72号が発生しました
外にいる人は直ちにシェルターに避難して下さい!』
街中に警報が鳴り響き、アナウンスが流れる。
年間の台風発生数は約150、風速は平均80m/sを超え、雨に混じる雹は弾丸の如く屋根をも貫く。
移動速度は200㎞/h以上で、発生から6~7時間で日本列島を縦断する。
「今週、五個目だぞ」
「最近は異常気象だからな」
「まったく…そのうち1日二個とかにならなきゃ良いけどな」
地上での生活は鉄板で覆われた装甲棟と呼ばれる施設で集団生活している。
施設同士は地下道で繋がっていて、工事関係者以外は余程の事がない限り外出する人はいない。
「大昔の台風は雨だけだったみたいだな?」
「…数も少なかったらしい」
「普通に外に出れたんだろ?」
「春は花見したり、夏は海水浴も出来たみたいだな」
施設には窓はあるが、外の景色は雑草が茂るくらいだ。
装甲棟以外の人工物はなく、木々が生えても雹により叩き折られる。
世界は異常気象により、どの国も瀕死の状況に陥っていた。
しかし、人類はそんな環境でもしぶとく生き抜いている。
end