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千分の一話噺

第621章  帰 郷


朝から蝉の声が響き渡り夏真っ盛り…。

「早くご飯食べちゃいなさい」

何年かぶりに実家へ帰ってきて、久しぶりにお母さんの朝食。

「はいはい…いただきま~す」

実家にいた頃は、何も考えず毎朝こうやってお母さんの朝食を食べてた。

しかし、一人暮らしを始めてからは朝食はほとんどコンビニのおにぎりになった。
お母さんの有り難みが身に沁みて分かった。
朝起きるとご飯が出来ていて、食べ終えると片付けてくれる。
当時お母さんも働いていたのに、今の私には真似出来そうもない。

「今夜は夏祭りだけど、浴衣着るの?」
「…浴衣はいいわ
優子達と呑む約束してるから…」
「じゃあ、晩御飯はいいのね?」
「うん、夕方には出掛けるわ」

出掛けるまでは、エアコンの効いたリビングでテレビを見ながら冷えたスイカをいただく。

「…いつまでこっちにいるの?」
「明後日帰るわよ」
「…あんた、彼氏とかいないの?」
「な、何よ!いるわよ、彼氏くらい!」
「休みの間、ずっとこっちにいるのにねぇ…」

強がってみたが、お母さんには見透かされていた。
私はスイカを食べ終わると優子に電話をして早めに会うことにした。

「…優子に会ってくるね」
「はぁ…あまり遅くならないのよ
お父さんが心配するから…」

外に出ると蝉の声が一際大きく聞こえた。


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