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千分の一話噺

第612章 懐かしの…


就職してからは、ほとんどアパートと職場の往復だけの毎日…。
休みの日に出掛ける気力も起きない。
「やりたかった仕事とはいえ、こんなにキツいとは思わなかった…」
特に夏場は更に暑さが加わり、油断すると熱中症になりかねない。
同期入社は10人いたが次々と辞めていった。
「まあ、毎年残るのは一人か二人だからな…」
先輩の言葉が重かった。

なんとか踏ん張って五年目に入った。
「今年は何人残るやら?
本当に好きな奴じゃなきゃ続けられないからな…
お前はよくやってるよ」
先輩に褒められやっと一人前になった気がした。

そんなある日、同窓会の知らせが届いた。
「同窓会か…」
今では休みの日に趣味のサーフィンが出来るくらいの余裕がある。
懐かしい顔に会いに田舎へ帰るのも悪くないと思い、特に仲の良かった何人かに連絡した。

『帰ってくるのか?楽しみだな』
『東京かぶれになってないよな?』
『何年も連絡しないで何やってんだよ』
『土産忘れるなよ』

返事はそれぞれだ。
みんな地元で就職したから、どこかでばったり会うなんてこともない。
「変わってなければ良いな…」
俺も変わってないだろうかと、ふと思った。


地元の駅に降りると仲間が出迎えてくれた。

「よう、久しぶりだな」
「何だよ、東京らしさがまるでないな」
「帰って来ないから彼女でも出来たのかって噂してたんだぜ」
「よし!みんな揃ったから、コレだな!」

仲間の一人がみんなに『あずきバー』を配った。

「俺達の夏はコレだろ?」
「違いない」
「学校帰りにみんなで食ったな」
「んじゃあ、学校行くか!」

俺達は『あずきバー』をかじりながら学校へ向かった。
あの頃と変わらず馬鹿話をしながら…。


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