第609章 いつかの七夕
七夕…。
それは真面目な働き者として名を馳せていた牽牛が神様の娘織姫に一目惚れした事に始まる。
織姫もまた牽牛に一目惚れし、二人はすぐに愛し合う様になった。
しかし、織姫の親父(神様)は二人が付き合う事を許さなかった。
そこを…。
「私は絶対牽牛と結婚します!」
織姫の強い意思が親父を押し退けた。
結婚すると織姫は牽牛とイチャイチャしたいから牽牛に仕事をさせなかった。
そのうち牽牛も怠け者になってしまった。
それが織姫の親父の逆鱗に触れ、離婚はさせられなかったが別居させられる。
しっかり働くなら年に一度、七月七日に天の川を挟んで逢い引きする事が許されるお伽噺だ。
しかし、織姫(ベガ)と牽牛(アルタイル)との距離は約15光年、ワープでも使わない限りすぐには逢えない。
しかも、ベガは太陽の2.5倍、アルタイルは太陽の1.8倍の大きさだ。
たぶん牽牛は完全に尻に敷かれただろう。
「じゃあ俺が牽牛やるから、お前は織姫な」
「ちょっと待て!何で俺が女役なんだよ!」
俺達は七夕祭りで仮装する役で揉めていた。
「それにお前が真面目で働き者って事はないだろ!?」
「ふふん、残念だがな織姫は牽牛よりデカいんだよ
チビの俺が織姫やるなんて無理なんだ!」
「そこまでこだわらなくても…」
相方はブツブツ言いながらもベガになった。
俺は天の川の反対側でアルタイルになった。
西暦35億8621万5322年、今は消滅してしまったベガとアルタイルの代わりに七夕祭りに合わせて空で輝く。
end