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千分の一話噺

第608章 異世界アパート20


仕事が終わると涼子がやって来た。
「綾子、買い物に付き合ってくれる?」
「うん、良いよ」
一緒にデパートへ向かった。
「…何買うの?」
「来週は父の日でしょ
今年は空梅雨みたいだけど、うちの親父は雨男だから、新しい傘でもあげようかなって…、綾子はどうするのよ?」
「私は…」
正直考えてなかった。

異世界に行ける様になってから、実家の事はほとんど考えなくなった。
こっちと向こうの二重生活が楽しくて、コロナの事もあるけどもう二年以上、実家に帰っていない。

「…子、綾子!
どうしたの?ぼ~っとして…」
「あっ…、ううん、私も何か探す!」
しかし、いろいろ見て回ったけど、これといったプレゼントは見つからなかった。
「そろそろご飯にしない?」
歩き疲れた涼子が根を上げた。

「ここのオムレツ、有名なんだよ」
デパートを出てちょっと路地を入った場所にある知る人ぞ知る名店。
「こんな所にあるんだ?」
涼子と一緒じゃなきゃ絶対入らないお洒落な店だ。
「うちの親父はほんとにポンコツでさ…」
「へ~、うちのお父さんはなんかサプリ漬けみたいな…」
オムレツを食べながらお互いの父親の愚痴で盛り上がった。

結局、父の日のプレゼントは見つからずアパートに戻って頭を抱えた。
「あ~あ、私何やってんだろ?
父の日のプレゼントも決められないなんて…」

異世界《グランロールス》ばかり行ってないで、たまには実家に帰ろうと思った。


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