第61章 白い影・完結編
雪の中で出会った女性に手を引かれるまま、白い輝きに包まれ連れて来られた場所は、全てが白い世界だった。
「雪国?」
「いいえ、白いだけですよ
だから寒くないでしょ」
彼女は振り返り、またニッコリと微笑んだ。
確かに寒くない。
「ここって…もしかして…天国?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
「いいえ、ここはあなたの居た世界の隣にある世界です」
(隣の世界?って事はこの人はお隣りさん?
な訳ねぇよな…。
異次元ってこと?異世界ってこと?
そんな話し聞いたことねぇぞ!!
でも、さっきまで雪の中だったのに、ここは全然寒くない
何なんだ、ここはっ!?
俺はとんでもない所に連れて来られたのか?
これって拉致だよな!?)
また自問自答が止まらなかった。
目が慣れてきて、白一色の景色が街中である事に気付いた。
建物も道も空まで白一色だ。
行き交う人も皆白いフードを被っていて、白しか見えない。
「あ…あのぅ…俺はどうなるの?」
また恐る恐る聞いてみた。
「ウフッ、あなたはここで私と結婚するのよ」
彼女はサラっと凄い事を言ってのけた。
「け、けっ、結婚!?」
数年後、俺達の間に女の子が生まれた。
この世界では、女の子しか生まれないそうだ。
だから、隣の世界から婿を迎える事になっていた。
この子も俺の居た世界から婿を連れて来るのだろう。
何か複雑な気分だ。
今はやっていないが、大昔は連れて来た男の代わりにそっくりな氷像を置いてきたそうだ。
当時、彼女達の事は「雪女」と呼ばれていた。
end