第599章 名人2
「今はけん玉名人じゃが、これでも若い頃はゴーゴーダンス名人でブイブイ言わせてたんじゃ!」
けん玉じいちゃんは得意気だ。
「何がブイブイじゃ?へっぴり腰のくせに…
あたしのモンローウォークに釘付けじゃったろ」
横から煙草屋のばあちゃんが口を挟んだ。
「あれがモンローウォークか!?
よろけてただけじゃろ?」
「なんじゃと!?」
売り言葉に買い言葉とはこの事か…。
二人は睨み合ったまま動かなかった。
そこにまた老人がやって来た。
「あん…な…で、に…る?」
老人は片言と手話で二人に話し掛けた。
「おお…源さんか?
このばあさんが戯れ言ぬかすから…」
「何言ってんだい?じじぃがあたしのモンローウォークにケチつけるから…」
「ふ…お…、お茶…し…」
じいちゃんとばあちゃんは手話は分からない。
ただ、長年の付き合いで源さんが何を言いたいのかはだいたい分かっていた。
「源さんが言うんじゃしょうがない
なあ、ばあさん」
「うむ、しょうがないのぉ
そこの茶屋に入るか」
三人は商店街の茶屋に入った。
「鮭と梅干しと明太子のお茶漬けを頼む」
ちょうど昼時と言うことで、じいさんがご飯を注文した。
三人で仲良くお茶漬けを食べると…。
「わしのゴーゴーダンスを見せてやるわい!」
「あたしのモンローウォークで腰ぬかすなよ!」
グキッ!
二人とも腰をやった。
end