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千分の一話噺

第598章 名人


けん玉を器用に操りながらおじいちゃんがやって来た。

「コロッケを一つ頼む」
「けん玉じいちゃん、今日も元気ね」
「当たり前じゃ
こうして毎日散歩してれば病気なぞ掛からんわい」

『けん玉じいちゃん』と言えば、この商店街では知らない人はいない有名人だ。
ほぼ毎日、散歩をしながら肉屋のコロッケを食べる。

「やっぱり、ここの揚げたてコロッケが一番美味いわい!」

コロッケを食べながらもけん玉は止めない。
けん玉界では「伝説のけん玉名人」と呼ばれているらしい。
そんなけん玉じいちゃんに挑戦しに来る人も多い。

「あんたが伝説の名人か!?
俺と勝負しろ!」

今日も若い挑戦者を相手にけん玉勝負をしている。
どちらも凄い技を次々成功させていったが…。

「くっ!…俺の負けだ…」

挑戦者は項垂れて帰っていく。
端から見ていると勝ち負けの基準は分からないが、当人達は納得している様だ。
今までじいちゃんが負けたとこを見た事がない。

「かっかっかっ!
まだまだ若いもんにゃ負けんわい!」

しかし…。

「おじいちゃん!そんなにはしゃいだら血圧上がるでしょ!」

一緒にいた孫に怒られて、シュンとなっていた。
孫には勝てない様だ。



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