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千分の一話噺

第596章 合宿


「今度のGW、楽しみだな」
浩二が満面の笑顔で肩を組んできた。
「ああ、そうだな…」
そうは返事をしたが、俺はあまり乗り気ではなかった。
それはたぶん俺だけではないだろう。


GWを利用して俺達『ミステリー研究部』は某県へ合宿する事になった。
「みんなでミステリーの舞台を見て回ろうぜ!」
部長の浩二がノリノリで場所を選んだ。

そして見つけたのが…。

ミステリードラマの舞台になった断崖絶壁や、自殺事件があって潰れた廃旅館や、入院患者が原因不明で何人も亡くなった廃病院などがある某県。
ミステリー研究部の合宿場所には最適かも知れないが、俺を含めた部員達は苦笑いしかなかった。

「あそこはヤバいだろ?」
「本当に出るらしいわよ」
「入った奴は必ず後で事故るって聞いたぜ」
浩二がいなくなると部員達の噂話が止まらなかった。
ネットで検索するともっとグロい情報もあった。
だが、浩二には誰も言えなかった。
もちろん俺もだ。

あいつは全部分かっていて選んでいるからだ。

だから、俺達が何を言っても聞く耳を持たない。
浩二は昔からそうだ。
用意周到で全てを自分の手の平の上で動かす力がある。
今度の合宿も絶対何か準備があるんだろう。
俺達部員はそれを楽しみにしているところはある。
が、今回ばかりはさすがに嫌な予感しかしなかった。



end

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