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千分の一話噺

第591章 花見


何年か前に友人の家の柴犬が仔犬を産んだ。
たまたま遊びに行ったときに、その仔犬の内の一匹が俺にくっついて離れなかった。
「なんだ?ずいぶんと懐かれたな
その子はお前に任せたからな」
友人に押し付けられた。

俺も犬は好きだが、今のアパートはペット禁止ですぐに飼うことは出来ない。
「飼える所に引っ越すまでうちで育てるから…」
と友人が言ってくれて、俺はこいつの為に引っ越す羽目になった。

仔犬は『コロ』と名付けた。
ちっちゃくてコロコロした姿が可愛くて、そのまんまな名前になった。

コロのせいにして、ちょうど転職を考えていた時期だし、引っ越して心機一転するのも良いだろうと思った。
都会を離れ田舎で暮らすのも悪くないかも知れない。

仕事も見つかったし、海も山も近い古い一軒家を借りる事も出来た。
平屋だが独り者にはちょっと広い。
が、コロを放し飼い出来る庭もあって、のんびり暮らすには良い環境だ。

休みの日にはコロを連れて散歩をする。
そんな散歩の途中で桜に囲まれた大仏を見つけた。
大仏と言えば奈良や鎌倉が有名だが、結構全国に点在している。
釈迦の身長より大きい仏像は全て大仏と言えるらしい。
座っていようが、立っていようが、寝ていようが、だ。
「こんな所に大仏があるとは…」
と驚いてみたが…。
周りには、『大仏饅頭』に『大仏団子』に『大仏ジェラート』に『大仏釜飯』まで売っていた。

俺はベンチで大仏釜飯を食べながら、コロと花見を楽しんだ。


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