第589章 脱走
「くっ…ここまでか!?」
俺は足がもつれて倒れ込んだ。
折角、自由になったと言うのに…。
追っ手がすぐそこまで迫っている。
「逃がすな!必ず取っ捕まえろ!」
また、あの奴隷の様な生活には戻りたくない。
這いつくばって必死で逃げる。
「俺には成りたいものがあるんだ!」
一緒にいた仲間達は…。
「そんなの無理だ!」
「俺達の行き先は決まってるんだぜ」
「逆らえばすぐに処分されるぞ…」
諦めたように言う。
俺はそんな奴らに…。
「お前は芸人のカツラにされていいのか!?
お前はタコパーでたこ焼きにされていいのか!?」
疑問を投げ掛ける。
「俺は嫌だ!
俺は寿司ネタとなって職人に握ってもらうんだ!」
しかし、仲間達は…。
「バカ言うな!寿司ネタになれるのは天然物《エリート》だけだぞ」
「そうだ、俺達みたいな養殖物は相手にされない」
否定的な事を言う。
「だから、養殖場《ここ》から抜け出すんだよ」
「しかし、外じゃあ餌は貰えないし敵もいる…」
「それがどうした!?
ここにいるよりマシだ!」
身体は柔らかいが、決意は固い。
『目指せ寿司ネタ!』
俺は決死の覚悟で養殖場《あそこ》から抜け出した。
end