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千分の一話噺

第59章 白い影・後編


「君は誰?」
俺の問いに少女は何も答えなかった。
真っすぐに見詰めていたその漆黒の瞳は、俺を惑わす様に潤んでいた。
俺が少女に一歩近づこうとしたその時、微笑んだ少女の薄紅色の唇が、「またね」と呟いた。
白い輝きが少女を覆い隠すと、その場から消えてしまった。
「えっ?ちょっと待っ…」
俺の声は届かず、足跡だけが残っていた。
そこにずっといたのか?いきなり現れたのか?足跡はそこだけだった。


「夢でも見たんだろ?
誰がそんな話し信じるよ」
誰に話しても信じてくれなかった。
俺は少女にもう一度会いたいと思い、あの後なんども同じ道を歩き、少女を捜したが見つからなかった。


あれから数年後。


あの日の様に、雪の降り積もった畑道の真ん中で白い服の女性と出会った。
黒髪をなびかせ、漆黒の瞳は俺を真っすぐに見詰めている。
「また会ったね」
呟いた女性にあの時の少女の面影が見えた。
「君はあの時の…」
女性はニッコリと微笑むと白い輝きを放った。
「待ってくれ!」
俺はまた消えてしまうと思い、女性に腕を延ばした。
「大丈夫よ」
女性は俺の手を取り、引き寄せた。
白い輝きは俺も一緒に包み込んだ。
余りの眩しさに目を奪われた。

目を開けるとそこは…。


end
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